結論から言うと、母の介護でいちばん迷ったのは、転倒を防ぐことと、薬を飲むことの優先順位でした。転倒を防ぎたいのに、薬の副作用が転倒を招くかもしれない。私はこの矛盾の前で、答えを出せませんでした。
迷ったときは、一人で決めずに「飲む場合」と「飲まない場合」の両方を医師や薬剤師に聞く。それが今の私の答えです。

えっ、薬を飲まなければ転びにくいなら、それでいいんじゃないの?
私もそう思いたかったのですが、話はそれほど単純ではありませんでした。
この記事は、前編の続きです。前編では、母が匂いを失ってから食べられなくなっていったことをお話ししました。
※ 前編:転倒ばかり気にして「匂い」の衰えを見逃しましたー母が食べられなくなった理由
結論 ー どちらを優先すべきか、私は決められなかった
医師の判断は、薬の副作用による転倒リスクの方が高い、というものでした。それで母は、内服をせずに過ごしていました。
それでも、迷いは消えませんでした。飲まない選択は、本当に母のためになっているのか。飲む選択をしたら、私が母を転ばせてしまうのではないか。どちらを選んでも、母を守れないかもしれない。そんな気持ちのまま、毎日が過ぎていきました。
母の状態 ー 足は、日によって動きが違った
母の足の状態は、日に日に悪くなりました。私は手すりを付け、ベンチや椅子を置いて、使いやすくなるよう工夫を重ねました。日によって足の動きも違うので、その日の様子を見ながら調整する日々でした。
転倒させたくない。その一心で、私の目は母の足に向いたままでした。そしてある日、母は転倒しました。そのあと、母はみるみる食べられなくなりました。
薬の名前を出さない理由 ー 眠気や脱力感が出る薬は、身近にたくさんある
この記事では、母の薬の名前をわざと出していません。眠気や脱力感が出る薬は、身近にたくさんあるからです。たとえば風邪薬もそうです。
風邪薬などに入っている抗ヒスタミン薬は、眠気を起こすことがあります。高齢の方では、めまいやふらつきから、転倒や骨折につながることもあります。特別な薬だけの話ではなく、私たちの身近な薬にも関わる話なのです。
数字で見る、転倒と薬の関係
転倒は、介護が必要になる大きな原因のひとつです。薬の数との関係も、数字で示されています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 要介護になった原因のうち「骨折・転倒」が占める割合(第3位) | 13.0% |
| 要支援になった原因のうち「骨折・転倒」が占める割合(第3位) | 16.1% |
| 5種類以上の薬を処方された高齢の外来患者で、転倒の起こりやすさ(オッズ比) | 4.5倍 |
出典:厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」、健康長寿ネット(各出典は記事末尾にリンクを掲載しています)

なるほど!調査では、薬が5種類以上になると、転倒の起こりやすさが約4.5倍という結果も出ているんだね!
私の失敗 ー 優先順位を決めきれなかった後悔
転倒を防ぐことと、薬を飲むこと。どちらの優先順位が高いのか。私は、その答えを持たないまま、目の前の転倒ばかりを見ていました。
その間に、匂いの衰えも、食べる量の変化も、私の優先順位の外に置かれていました。転倒を防ぎたい一心で、母が食べられなくなっていくことに、気づくのが遅れたのです。
優先順位の答えは、今も私には出せません。薬の種類も、体の状態も、人によって違うからです。ただ、迷ったときに医師や薬剤師へ何を聞けばよかったのかは、今ならわかります。
今日からできるチェックリスト
- 今飲んでいる薬を、市販の風邪薬やサプリも含めて、すべて書き出す(お薬手帳も持っていく)
- 「この薬で、眠気やふらつき、脱力感は出ますか」と聞く
- 「飲まなかった場合、何が起きますか」と聞く
- 「転倒の危険が上がるなら、ほかの選択肢はありますか」と聞く
- 薬を変えた日は、眠気、ふらつき、食べる量をメモする
- 自己判断で、薬をやめたり、増やしたりしない

なるほど、迷ったら一人で決めずに、「飲む場合」と「飲まない場合」の両方を医師や薬剤師に聞けばいいんだね!
まとめ ー 守るのは、転ばない体と、食べる力の両方
転倒を防ぎたいのに、薬が転倒を招くかもしれない。この矛盾に、正解を一人で出そうとしたことが、私の後悔の始まりでした。
転倒予防、薬、そして食べる力。この3つを切り離さずに、医師や薬剤師と一緒に考えること。それが、今の私が伝えられるいちばんの答えです。
あわせて読みたい:前編:転倒ばかり気にして「匂い」の衰えを見逃しましたー母が食べられなくなった理由/嗅覚・味覚の変化は認知症のサイン?60代からの備え
参考:

