以前、終のすみか探しの記事で「徒歩圏内にあってほしい施設」のリストに、こう書きました。
訪問介護事業所(重要)
スーパーでも駅でもなく、なぜ訪問介護事業所に「重要」と付けたのか。今日はその理由を書きます。答えは、母の介護で目の当たりにした経験のなかにあります。
ある日を境に、「できていたこと」ができなくなる
母の介護で思い知ったことがあります。人は、ある時を境に、昨日までできていたことが少しずつできなくなっていくということ。
本人にとっては、不安と戸惑いの連続です。母は「できないこと」への苛立ちを、何かにつけ怒りとして表すようになりました。そしてその怒りは、親子関係だと特に激しく出ます。娘だから遠慮がない。介護をされたことのある方なら、うなずいてくださるのではないでしょうか。
「他人を家に入れたくない」壁を越えられたのは
訪問介護を勧めても、母は初め「他人が家に入るのは嫌」と拒みました。これは母に限らず、多くの高齢者がぶつかる壁だと思います。
転機をつくってくれたのは、ケアマネジャーさんの機転でした。母が通っていたデイサービスの職員さんが訪問介護もされていて、その方に来てもらえるよう調整してくださったのです。
母はデイサービスではあまり話せずにいたようですが、「自分の家に、自分のために来てくれた」ことをとても喜びました。顔見知りの人が一対一で向き合ってくれる。それだけで、閉じていた扉が開いたのです。
訪問介護は「その人に必要な援助」を組み立ててくれる
訪問介護と聞くと身体の介助を想像しがちですが、実際はその人の暮らしに合わせて内容が組み立てられます。母の場合は、こんな援助を受けていました。
・掃除、洗濯
・冷凍冷蔵の宅配食の受け取りと、冷蔵庫への収納
・歯科受診の付き添い など
何が必要かは、ケアマネジャーさんが本人・家族・介護職員に聞き取りをしてケアプランを立案してくれます。私が電話をかけると母の様子も伝えてくださって、感謝しかありません。
私は母の家まで片道1時間30分。正社員で働いていたので、すぐに駆けつけられない日常を支えてもらえたことが、どれほどありがたかったか。
事業所が「近い」と、何が違うのか
ここが今日の本題です。母の担当職員さんの事業所は近くにあり、それが実際のサービスの質に直結していました。
・急な依頼に応じてもらいやすい ― 移動がすぐなので、予定外のお願いにも対応していただけました
・キャンセルや変更に柔軟 ― 体調は日によって変わります。近いからこそ調整がききました
・悪天候の日も来てもらえる ― 台風や大雪の日、遠い事業所なら訪問自体が難しくなります
介護は「予定通り」にいかないことの連続です。だからこそ、距離の近さがそのまま安心の大きさになる。これが、私が住まい探しの条件に「訪問介護事業所(重要)」と書いた理由です。
地域包括支援センターと、ケアマネジャー選び
もうひとつ助かったのが、母の地域の地域包括支援センターが駅前にあったことです。
年金暮らしの介護では、介護保険をはじめ申請書類の提出が度々あります。日本の制度は「申請しないともらえない」仕組みです。知らなければ、受けられるはずの支援も受けられません。
だからこそ、制度の知識が豊富なケアマネジャーさんを選ぶことが本当に大事。そして相談窓口である地域包括支援センターが通いやすい場所にあることも、暮らしやすさのひとつだと実感しました。
リハビリをやめた母と、転倒
母はO脚とX脚があり、転倒リスクの高い脚でした。現状維持のため、外科病院が運営するリハビリ型デイサービスを選んで手続きしたのですが、母には楽しくなかったようで、拒否して辞めてしまいました。
「楽しい」は、続けるために本当に大事なのだと思い知りました。
リハビリを辞めると筋力は落ち、うまく歩けなくなり、家の中には突っ張り式の簡易手すりがいくつも設置されました。けれど母の家は広く、どう見ても手すりの間隔と母の歩幅が合っていません。案じていた通り、母は家の中で転倒。私は救急車に一緒に乗って、病院へ向かうことになりました。
この経験があったから、私は自分の終のすみかについて、こう考えるようになりました。
ひとり暮らしには、1DKくらいがちょうど良い。
狭い部屋は、支えになる家具や壁までの距離が近く、自分で転倒予防の工夫がしやすい。杖や歩行器を使うようになっても対応できます。この考えで作った私の部屋の動線は、家具配置で転倒予防の記事に詳しく書いています。
まとめ ― 元気なうちに選ぶから、介護の視点を入れられる
要介護になってから住まいを変えるのは、心にも体にもお金にも、大きな負担がかかります。
だからこそ、元気な今のうちに選ぶ終のすみかには、「介護が始まった日」の視点を入れておく。訪問介護事業所が徒歩圏内にあるか。地域包括支援センターは通いやすいか。それは、まだ見ぬ未来の自分と、いつか私を支えてくれる誰かのための条件です。
母の介護で受け取ったものを、今度は自分の暮らしの準備に活かしていく。それが私なりの、母への感謝の形でもあります。
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ひとり暮らしの「もしも」の備えについては、こちらの記事に書いています。
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