年金が少ない方に教えたい支援制度|非課税世帯の軽減まとめ

暮らしとお金

63年生きてきて、何度も目にしてきた光景があります。

同じように働き、同じように年を重ねてきたのに、制度を「知っている人」は助かり、「知らない人」は困ったままという光景です。介護の場面でも、仕事探しの場面でも、それは同じでした。

日本の支援制度のほとんどは「申請主義」です。つまり、自分から申請しないと、1円も出ません。どんなに困っていても、役所の方から「あなたはこの制度が使えますよ」と教えに来てくれることは、基本的にないのです。

私自身、母の介護のときに「もっと早く知っていれば」と思ったことが一度や二度ではありません。今日は、年金が少ない方・住民税非課税の高齢者が使える主な制度を、できるだけ分かりやすくまとめます。

ご本人はもちろん、離れて暮らす親の生活が心配な方にも読んでいただきたい内容です。お子さんの教育費がかかる時期に、親の年金は少ない――そんな板挟みのご家庭こそ、親御さんが使える制度を知っているかどうかで、家計の負担が大きく変わります。

※金額や条件は2026年7月時点のものです。制度は改定されるので、最終確認はお住まいの市区町村でお願いします。

まず「住民税非課税」かどうかが分かれ目

これからご紹介する制度の多くは、「住民税非課税世帯」が対象です。

難しく聞こえますが、要するに「収入が一定より少なく、住民税がかからない世帯」のこと。年金だけで暮らす高齢者世帯の多くが、ここに当てはまります。

ご自身やご両親が非課税かどうか分からない場合は、毎年6月頃に届く住民税の通知を見るか、市区町村の窓口で確認できます。ここが分かれば、使える制度が一気に見えてきます。

お金が直接もらえる制度

年金生活者支援給付金

住民税非課税で、年金収入などが一定以下の方に、年金に上乗せして毎月支給されるお金です。2026年6月支給分からは月額5,620円に増額されています。

大事なのはここです。この給付金、対象になると請求のハガキが届くのですが、そのハガキを返送しないと受け取れません。一度手続きすればあとは継続するのに、最初の一枚を「よく分からないから」と放置してしまう方がいるのです。もし親御さんのもとに緑色の封筒やハガキが届いていたら、ぜひ確認してあげてください。

住民税非課税世帯向けの臨時給付金

物価高対策などで、国や自治体から不定期に支給されるお金です。過去には3万円〜10万円といった給付がありました。

こちらの落とし穴は、案内が届いても「詐欺かもしれない」と捨ててしまう方がいること。たしかに給付金をかたる詐欺もあるので、慎重なのは正しい姿勢です。迷ったら、案内に書かれた電話番号ではなく、市区町村の代表番号にかけて確認するのが安心です。

医療費の負担が軽くなる制度

高額療養費の低所得者区分

医療費の自己負担には月ごとの上限があり、非課税世帯はその上限が大幅に低く設定されています。75歳以上なら、外来は月8,000円、入院を含めても月15,000円〜24,600円で頭打ちになります。

「入院したら貯金がなくなる」と過度に恐れなくていい仕組みが、ちゃんとあるのです。

入院時の食事代の減額

非課税世帯は、入院中の食事代が1食あたり大きく減額されます。ただしこれも事前の申請(減額認定)が必要です。入院が決まったら、病院の窓口や市区町村に「非課税世帯なのですが」と一言伝えてください。

高額医療・高額介護合算制度

医療と介護の両方を使った年は、その合計額にも年間の上限があります。非課税世帯は上限が年19〜31万円程度と低く、超えた分は申請で戻ってきます。医療と介護が同時進行するご家庭ほど、知っておきたい制度です。

介護費用が軽くなる制度

母の介護を経験した私が、声を大にしてお伝えしたいのがこの分野です。

特定入所者介護サービス費(補足給付)

特別養護老人ホームや老人保健施設に入所したり、ショートステイを使ったりしたときの食費と部屋代が、非課税世帯なら大幅に軽減される制度です。施設の費用が月数万円単位で変わる、影響のとても大きい制度です(預貯金の要件あり・要申請)。

「施設は高いから無理」とあきらめる前に、まずこの制度を確認してください。

高額介護サービス費

介護サービスの自己負担にも月額上限があります。非課税世帯なら月24,600円、年金80万円以下の方なら月15,000円まで下がります。

社会福祉法人等による利用者負担軽減

社会福祉法人が運営する施設・サービスでは、低所得の方の利用料がさらに1/4程度軽減される制度があります。知名度の低い制度の代表格で、事業所側から案内されないことも。使っているサービスが社会福祉法人の運営なら、聞いてみる価値があります。

保険料そのものの軽減

介護保険料や国民健康保険料も、非課税世帯は低い段階が適用されます。こちらは珍しく申請不要で自動的に軽減されます。

見落とされがちな、その他の制度

  • 自治体独自のサービス――紙おむつの支給・助成、配食サービス、緊急通報装置の貸与、寝具の丸洗い、タクシー券など、市区町村ごとに驚くほど多彩です。お住まいの自治体の「高齢福祉課」のページを一度眺めてみてください
  • 葬祭費・埋葬料――国保・後期高齢者医療の加入者が亡くなったとき、申請すると5万円前後が支給されます。これも「申請しないともらえない」典型例です
  • 生活福祉資金貸付・生活困窮者自立支援――一時的にお金が足りないときの低利・無利子の貸付や、家計の相談窓口があります

「知らないことは、質問できない」への答え

ここまで読んで、「制度が多すぎて覚えられない」と思われたかもしれません。大丈夫です。全部覚える必要はありません

覚えるのは、たったひとつ。「地域包括支援センター」という名前だけです。

中学校区にひとつ程度の割合で設置されていて、高齢者に関するあらゆる相談を無料で受けてくれる、いわば「総合案内所」です。介護のことだけでなく、お金の制度も横断的に教えてくれます。

聞き方は、「何か使える制度はありませんか」という漠然としたもので構いません。それに答えるのが、あの窓口の仕事だからです。ケアマネジャーさんがついている方は、ケアマネさんも制度情報の宝庫です。

私が母の介護で学んだことのひとつは、「困ってから調べる」のと「困る前に相談先を知っている」のとでは、心の余裕がまるで違うということでした。

境界線ぎりぎりの方へ――申告で変わることがあります

最後に、大事な補足をひとつ。

収入が非課税ラインの少し上、という方は、確定申告(住民税申告)で医療費控除や社会保険料控除を申告すると、非課税世帯に入れる場合があります。そうなると、今日ご紹介した制度が一斉に使えるようになるのです。

境界線上の方ほど、申告の価値があります。「うちは対象外だろう」と決めつける前に、一度確認してみてください。

おわりに  知っているだけで、暮らしは守れる

制度を知っているかどうかで、年間数十万円変わることも珍しくありません。それなのに、情報は向こうからやって来ない。だったら、こちらから取りに行くしかありません。

この記事が、ご自身の暮らしを守るため、そして離れて暮らす親御さんの暮らしを守るための、小さな入り口になればうれしいです。

分からないことがあったら、地域包括支援センターへ。「何か使える制度はありませんか」――その一言から、始めてみてください。