洗濯物を干していたある朝、ふと目に入ったのは、よそのお宅のベランダに設置されたソーラーパネルでした。
「ああいう備え、うちにも必要かもしれないな」
そんなことを、ぼんやり思っただけでした。まさかその直後に、身をもって思い知らされることになるとは。
事件は突然に―買い物から帰ると、エアコンの様子がおかしい
その日、買い物から帰宅すると、エアコンの動きがなんだかおかしいのです。
困ったなと思っていたら、ちょうど子どもから電話がかかってきて、話しながらリモコンを操作すると、なぜか動き出しました。それも、寒いほどキンキンに冷える。直ったのかしら?と思ったのも束の間、22時を過ぎた頃、今度は完全に止まりました。
説明書を引っ張り出して、書いてあることを一通り試してもダメ。説明書のQRコードをスマホで読み取って、メーカーのAIチャットの指示通りに進めてもダメ。夜間の電話窓口にかけて、ようやく出た答えは――
「故障ですね」
外は猛暑。エアコンのない部屋で、その夜はほとんど眠れず、頭がボーッとしたまま朝を迎えました。
「部品が来ないと直せません」―最新式ゆえの落とし穴
朝、メーカーからの電話を待っても鳴らず、こちらからかけ直して、ようやく見に来てもらえました。診断の結果は「センサー基盤の不良」。
「部品が来てから修理です。空気清浄と送風は使えるので、設定しておきますね。部品は早くて月曜日、遅くても水曜日です」
さらっと言われましたが、ちょっと待ってください。今日から数えて4日、眠れなかった昨夜から数えれば5日間、この猛暑にエアコン無しということですか?
「買ったばかりの最新式なのに?」と聞くと、「新しい機種はセンサーがたくさん付いているので、部品が来ないと無理なんです」とのこと。
高機能はありがたい。でも、壊れたときは部品待ち。最新式には、こういう落とし穴があったのです。
慌ててスポットクーラーのレンタルを探しましたが、見つかりません(考えることはみんな同じなのでしょう)。そうだ、AIに聞いてみよう!と思い立ったものの、こういう「今すぐ近所で借りたい」という質問は苦手なようで、頼りになりませんでした。
あがいても、無理なものは無理。こうして私の「猛暑のエアコン無し生活」――図らずも、夏の防災の予行演習が始まりました。
エアコン無し5日半の記録
住まいの「熱のクセ」を初めて知った
まずやったのは、家に熱をこもらせないこと。換気扇をすべて「強」で回し、故障中のエアコンも空気清浄・送風を「強」にしました。
そこで気づいたことがあります。私の住まいは鉄筋コンクリートの集合住宅の中階、しかも両隣に挟まれた中間の部屋。密閉性が良い分、一度こもった熱が逃げないのです。
試行錯誤の結果、窓を開けて風を通すのは夜から明け方まで。日中はむしろ窓を閉め切った方が室温はマシでした。外が体温超えの暑さだと、日中の換気は熱を招き入れるだけなんですね。自分の家の「熱のクセ」は、こうなって初めて分かりました。
冷蔵庫は命綱だった
この5日半で、いちばんありがたみを感じた家電は冷蔵庫です。氷がある。冷たい飲み物がある。それだけで、どれほど貴重だったか。
私の暑さ対策は、こうです。
- 頭に保冷剤を巻く(溶けたら交換)
- ペットボトルの水を凍らせて、サーキュレーターの前に置く(少しだけ涼しい風になります)
- 冷たい水分をこまめに補給
- シャワーは1日2回
効果のほどを正直に言うと、「頭がボーッとするのが、少しマシになる」程度です。それでも、このわずかな「マシ」に助けられました。
体力と気力が、想定外の早さで奪われていく
はじめの頃は、日中は図書館やカフェへ涼みに出かけていました。
でも、夜は暑くて眠れません。掃き出し窓を開けて座り、水分補給と保冷剤の交換を繰り返す夜。寝不足は翌日に持ち越され、日に日に体がダルくなり、そのうち涼みに出かける元気すらなくなりました。
シャワーを浴びても汗で体はベタベタ、あせもができて痒い。水分は摂れていても、体温超えの暑さに体力は確実に削られていく。痩せないのに、体力と気力だけはドンドン奪われていく――この早さは、完全に想定外でした。
母のことを、思い出した
介護をしていた頃、母は真夏でも「勿体無い」とエアコンを切ってしまう人でした。リモコンを手の届かない所に置けば、今度はブレーカーを落とす。当時の私は「どうして分かってくれないの」と困り果てるばかりでした。
でも今回、自分が真夏にエアコン無しで過ごしてみて、体で理解しました。この暑さの中でエアコンを使わないことが、どれほど危険か。そして、判断力が下がっていく高齢者が熱中症になっていく構図が、どういうものか。
離れて暮らす家族がいる方は、夏の「エアコンつけてる?」の一本の電話が、本当に命を守ると思います。私自身も、ひとり暮らしの備えとして最新式のエアコンを購入して故障。見守りサービスを利用検討の理由のひとつが、これです。訪問介護など、ひとり暮らしの介護を支えるサービスの話はこちらの記事に書いています。
エアコン故障だけでこれなら、夏の災害だったら?
5日半を耐えながら、ずっと頭にあったのはこの問いです。
今回はエアコンが壊れただけ。もしこれが夏の災害・停電だったら?
私を支えてくれた冷蔵庫も、換気扇も、サーキュレーターも、全部止まります。氷も、冷たい水も、涼しい風も無い。想像して、正直、怖くなりました。
だから今、真剣に備えたいと思っているのがこの3つです。
- 充電式(バッテリー式)のサーキュレーター――停電でも風を作れる
- ポータブル電源とソーラーパネル――冷蔵庫や扇風機の命綱に
- スポットクーラー――借りられないなら、備えておく選択肢も
洗濯物を干しながら眺めた、あのベランダのソーラーパネル。「必要かもしれない」は、5日半を経て「必要」に変わりました。
夏の在宅避難の備えについては、改めて防災の記事で詳しく書く予定です。
おわりに 当たり前の日常に、感謝が増した
修理の方がやっと来てくれて、エアコン無し生活は5日と半日で終わりました。とはいえ、熱中症になっていたのではと思うほど体も頭も動かず、その後しばらくダウン。回復には数日かかりました。
最後に、この経験からの小さな教訓をひとつ。エアコンは「買ったばかりの最新式」でも壊れます。保証書と購入店・メーカーの連絡先は、すぐ取り出せる場所にまとめておくこと。真夜中に説明書を探し回る元気は、猛暑の部屋にはありません。
スイッチひとつで涼しい部屋。冷たい麦茶。ぐっすり眠れる夜。当たり前だと思っていた日常のありがたさが、この夏、確実に増しました。
どうかみなさまも、エアコンの調子には早めに気を配って、この猛暑を無事に乗り切ってください。

