エンディングノートの書き方ー何を・どの順で書く?実務チェックリスト

ノートとペン、ドライフラワーのある柔らかな光の写真 介護・見守り

結論から書きます。エンディングノートに書くことは、突き詰めると5つだけです。お金と契約、医療・治療の希望、介護の希望、葬儀とお墓の希望、そして家族へのメッセージ。この順番で埋めていけば、途中で止まりにくくなります。あわせて、エンディングノートには法的な効力がないことも、書く前に知っておいたほうがいい事実です。今日はこの「何を、どの順で、どこまで書くか」を、私自身の実例とともにお伝えします。

前回の記事「60代ひとり暮らしのエンディングノートー母の介護で学んだ『残される側』のリアル」では、母の介護で感じた気持ちの部分を書きました。今回はその続きとして、実際に書く作業そのものにしました。

まだ9割の人が書いていないという現実

エンディングノートという言葉は、もうすっかり定着した感があります。それでも、実際に書いている人はまだ多くありません。全体では約9割が未作成というデータもあり、75歳以上に限っても、準備しているのは23.3%にとどまるという調査もあります(下記出典リンク記載)。

「大事なのはわかっているけれど、まだ書けていない」。私も長い間、そちら側でした。

母に伝えたら、怪訝な顔をされた

私が最初に手ごたえのなさを感じたのは、母に「こんなノートがあるのよ」と見せたときのことです。

母は、「何よそれ、縁起でもない」と言わんばかりの顔をしました。私はそれ以上言葉を続けられず、そこで話が終わりました。

今振り返ると、「もしものときに困るのは私だから、力を貸してほしい」というような、頼る側の言葉のほうが、受け取りやすかったのかもしれません。

この経験があったので、自分のエンディングノートを書き始めることにしました。

書くこと①お金と契約ー金額は書かなくていい

最初に手をつけたのは、財産目録のような大げさなものではなく、ただの一覧です。銀行口座はどの銀行にあるか、保険はどの会社の何の保険か、年金は基礎年金番号の控えがどこにあるか、毎月の固定費とサブスクは何をどこと契約しているか。この4つを書き出すだけです。

ポイントは、金額を書かなくていいということ。残高は日々変わりますし、書くこと自体が気重になります。「どこに、何があるか」さえ分かれば、残された人は手続きにたどり着けます。

私自身は、預金や投資、クレジットカードの数を断捨離して、お金の流れをシンプルにしました。保険もひとり暮らしなので大半を解約し、火災保険など本当に必要なものだけを残しています。持っているものが少なければ、書く量も、残された人が確認する量も、それだけ減ります。

書くこと②医療・治療の希望ー迷わせないために

この項目を書こうと思った直接のきっかけは、母の介護でした。

母は、自分の状態がどんどん変わっていくことに気力を失っていき、生きることに前向きになれない言葉を口にするようになりました。それを聞いた周囲の家族も、どう受け止めればいいのか分からず、戸惑う場面がありました。頭がしっかりしていたころの母は、エンディングノートのようなものを嫌っていて、結局は何も選ばないまま、そのときどきの流れに従っていくしかありませんでした。

正解のない状況で、家族が代わりに判断し続ける負担は、想像以上でした。あのとき、母の言葉として何か一つでも書かれたものがあれば、家族の迷いはもっと小さかったはずです。私は、自分の子どもに同じ思いをさせたくありません。

だから私は、次の5つをはっきり書くことにしています。

自分で判断できなくなったときに、誰に判断してもらうか。病気の告知について、どこまで伝えてほしいか。余命がわずかになったとき、どんな治療を望み、何を望まないか。脳死のような状態になったとき、延命措置を望むか。そして、臓器提供について、どう考えているか。

この5つを、家族の中で判断してほしい人を一人決めたうえで、その人に向けて書いておく。相手が誰であるかより、「迷わず動ける状態にしておくこと」のほうが大事だと、母のときの経験から学びました。

書くこと③介護の希望ー場所とお金、そして自分らしさ

介護が必要になったときのために、書いておきたいことは大きく2つです。ひとつは、介護してほしい場所と、してほしい相手。もうひとつは、介護にかかる費用がどれくらいになりそうか、あらかじめ確認しておくことです。

もうひとつ、忘れずに書いておきたいのが、実際に介護をしてくださる方に向けたページです。性格は人見知りか社交的か。食べ物や音楽の好み。くつろぎ方、入浴剤の好み、家で着る服の好み。声の大きさや、話すスピード、行動のペースの好み。

こうした細かなことを事前に伝えておくと、お世話をしてくださる介護職の方との間に、お互いに待てること、急いでほしいことへの配慮が生まれます。これは、私自身が母の介護でデイサービスの職員の方々に助けられた経験から、強くそう感じている部分です。

書くこと④葬儀とお墓の希望ー決めなくていい項目もある

葬儀については、するかしないか、生前の準備の有無、宗教や菩提寺、予算と規模、場所、戒名、香典、祭壇、遺影、流す音楽や花、棺に入れてほしいもの、といった項目があります。

すべてを決めなければいけないわけではありません。私自身、葬儀は火葬だけで十分と考え、事前の準備はせず、費用は預金でまかなうことにしています。祭壇や遺影、音楽や花について、特に希望はありません。棺に入れてほしいものだけは、大切な人の遺影と着物、と決めています。

お墓についても同じです。私の実家のお墓は、父方・母方ともに墓じまいを検討する事態になっています。少子高齢化で、墓を守っていく人がいなくなってきているためです。私は今のところ、合祀の永代供養か散骨かを、費用の面も含めて検討している最中です。供養や年忌法要についても、「無理に形式を守らなくていい、折に触れて思い出してもらえれば十分」というのが今の気持ちです。すべての項目を埋めることより、「今の自分の気持ち」を正直に書くことのほうが大切だと感じています。

書くこと⑤家族へのメッセージー気がかりなことも正直に

最後の項目は、家族へのメッセージです。ここには、気がかりなこと、処分してほしいもの、大切な人へのメッセージ、そして万が一のときに誰に知らせてほしいかを書いておきます。

私自身は、気がかりなこととして「住まいの片づけをさせてしまうこと」への謝罪を一言書きました。処分してほしいものは、子どもが要らないと思うものはすべて、とだけ決めています。細かく指示するより、判断そのものを託したほうが、残された側は動きやすいだろうと考えたからです。

大切な人へのメッセージは、家族一人ひとりの幸せを願う言葉を短く残しました。知らせてほしい人については、私の場合、誰にも知らせなくていい、という結論に落ち着いています。遠方に住む子どもが、知らない相手にまで連絡するのは大変だろうと思うからです。この項目に「正解」はありません。今の自分の本音を、飾らずに書いておくことが、いちばんの目的だと思っています。

エンディングノートには法的な効力がない

ここまで具体的な希望を書いてきましたが、大事な事実をお伝えしておきます。エンディングノートには法的な効力がありません(下記出典リンク記載)。

財産の分け方を法的に有効な形で残したいなら遺言書、判断能力が低下したあとの財産管理や契約を支えてほしいなら成年後見制度、というように、法的な効力を持たせたい部分は別の手続きが必要になります。エンディングノートは、あくまで「自分の考えを、自分の言葉で残しておく」ためのものです。法的な拘束力がない分、書くハードルは低くていいのだと、私は捉えています。

家族への伝え方ー母から学んだこと

書き終えたノートは、渡さなければ意味がありません。ただ、私は母の一件もあり、日常の会話のついでに、さらっと伝えるようにしています。「最近、こういうことを書いてみたんだけど」くらいの軽さで十分だと感じています。置き場所と、存在だけを伝えておけば、中身は元気なうちに何度でも書き直せます。

まとめー今日からできるエンディングノートチェックリスト

□ お金と契約の一覧を作る(金額でなく「どこに何があるか」だけでいい)
□ 医療・治療の希望を書く(判断してほしい人を一人決めたうえで)
□ 介護の希望を書く(場所・費用に加えて、自分の好みも)
□ 葬儀とお墓の希望を書く(決められる項目だけでいい)
□ 家族へのメッセージを書く(気がかりなこと、処分してほしいものも)
□ 法的に効力を持たせたいことは、遺言書や成年後見など別の手続きで
□ 書いたことを、身構えずに家族に伝える

母の介護では、”物”を探すことに苦労しました。今回書いてきた5つの項目は、私が同じ苦労を子どもにさせないために、今、少しずつ埋めているものです。前回の記事に書いた気持ちの部分とあわせて、読んでいただけたら嬉しいです。

出典リンク

終活の準備状況調査|ベンチャーサポートコンサルティング(約9割未作成)
エンディングノート意識調査|日本トレンドリサーチ(75歳以上23.3%)
エンディングノートの法的効力|東京弁護士会