終のすみかを選ぶとき、私は「呼び寄せ介護はしない」と決めていました。
知人の後悔 ―「呼び寄せ介護」という選択
母の介護が必要になったとき、私は母を自分の家に呼び寄せませんでした。そう決めた理由には、ある知人の経験があります。
知人は田舎で暮らすお母様の介護が必要になり、思い切って自分の家に呼び寄せました。「一人にしておけない、そばで見ていたい」という気持ちからの決断だったそうです。ところが呼び寄せてから認知症の症状が急速に進み、わずか1ヶ月後にお母様は亡くなってしまいました。
知人の後悔と落胆は、想像以上のものでした。「良かれと思ってしたことなのに、こんなに早く逝ってしまうなんて。何もしなければよかった」。その言葉が今も忘れられません。
環境の変化に耐えられるかどうかは、認知症の有無で分かれる
この話を聞いて感じたのは、歳を重ねてから認知症の症状が出ている方にとって、住み慣れた場所を離れる「環境の変化」は想像以上に厳しいものだということです。それは、たとえ相手が実の娘であっても、「安心できる環境」であっても、変わらないようでした。
一方で、まったく逆のケースもあります。歩くことができて認知症の症状がなく、好奇心を持ち続けている方は、環境が変わっても、むしろお元気になられることが多いのです。実際、100歳を超えてお元気な方には「歩ける」方が多い印象があります。車椅子を使っていても、好きなことのために定期的に外へ出かける好奇心旺盛な方は、やはりお元気です。
つまり境目になるのは、住み慣れた場所かどうかではなく、「歩ける体力」と「好奇心」の2つがあるかどうか、なのだと思います。
私が目指す「ピンピンコロリ」のために、自分でできること
こうした違いを目の当たりにして、私は改めて自分自身の老後について考えるようになりました。目指すのは、いわゆる「ピンピンコロリ」――最後まで元気に過ごし、寝たきりの期間を長引かせずに人生を終えること。そのために、自分の意思と行動で備えられることが2つあると思っています。
一つ目は、足の筋肉をつけること。歩く力を保つことは、転倒や骨折を防ぐことにも直結します。年齢を重ねるほど、筋肉は「つけて維持する」意識がなければ失われていく一方です。
二つ目は、好きなこと・習い事を続けること。座ってできるものと、体を動かすものをいくつか組み合わせておくのがポイントです。どちらか一方に偏らず、心と体、両方に刺激を与え続けることが元気の秘訣だと感じています。
住まい選びの条件に「公民館」を入れた理由
この考えから、私は住む場所を選ぶ条件のひとつに「公民館」を含めることにしました。
行政が発行する情報誌を見ると、公民館では合唱、英会話、水彩画、麻雀、手芸、写真、パソコンといった講座のほか、卓球、テニス、体操、ダンス、野球のシニア会員募集などが定期的に掲載されています。しかも費用はお財布に優しく、歩いて通える距離であれば交通費もかかりません。
好きなことを、無理のない費用と距離で続けられる場所。それが、私にとっての住まい選びの大切な条件になりました。
引っ越してから分かった、うれしい誤算
実際に住み始めてから分かったこともあります。終のすみかを探し、UR住宅へ引っ越したこの場所では、住人同士の交流のために麻雀サークルや卓球サークルなどの案内が掲示板に貼られていました。しかもUR会館まですぐに行ける距離です。さらに、徒歩圏内にテニスコートまであることも、後から気づいたうれしい発見でした。
まとめ ― 住まい選びは 自分の「ピンピンコロリ」への備え
介護は、いつか誰にでも訪れるかもしれないテーマです。今回の知人の経験は、「呼び寄せる」という決断がすべての人にとって正解ではないことを教えてくれました。
そして私自身の老後については、住み慣れた場所を離れるかどうかよりも、「歩ける体力」と「好奇心」を持ち続けられるかどうかが分かれ道になる、そう考えるようになりました。
もし今、住まい選びをこれから考える方がいたら、次の2つの視点をぜひ参考にしてみてください。
- 足腰の筋肉を保てる環境(歩ける距離に通える場所、運動系の講座があるか)
- 好きなことを気軽に続けられる環境(公民館や地域サークル、費用や距離の負担が少ないか)
自分の「ピンピンコロリ」は、誰かに用意してもらうものではなく、日々の選択の積み重ねでつくっていくものなのかもしれません。
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