結論:年金は「あと20万円」で天引き額が跳ね上がる
大阪府〇〇市在住、独身、年金収入以外の所得なしという条件で、年金受給額を150万円・200万円・220万円の3パターンでシミュレーションしてみました。
年金収入が150万円なら住民税は非課税になり、天引き率は65〜74歳で約5.3%、75歳以上で約4.7%。
200万円になると天引き率は12.6%〜11.4%まで上がり、さらに220万円になると14.1%〜12.8%まで上がります。

えっ待って、200万円から220万円ってたった20万円しか差がないのに、天引き率が2〜3ポイントも上がるの…?何がそんなに違うの?
⚠️に200万円から220万円へのたった20万円の差で天引き率が2〜3ポイントも跳ね上がるのは、国民健康保険や後期高齢者医療の「2割軽減」の基準(単身世帯で総所得金額等100万円以下)をちょうど超えてしまうからです。
年金額を増やすことが、そのまま手取りの増加にはつながらない。これが今回いちばん伝えたいことです。

なるほど!年金額を増やすことより、「手取りがどうなるか」で考えるのが大事なんだね!
私が「住民税非課税の150万円」を目指していた理由
実はわたし自身、老後計画としてずっと「年金受給額を150万円あたりに収める」ことを目標にしていました。ひたすら証券や貯蓄を増やして、年金だけでなく資産全体で暮らしを組み立てるつもりだったのです。この150万円というラインには理由があります。
母の介護をしていたとき、担当のケアマネージャーさんから、住民税が非課税になると次のようなメリットがあると聞きました。
- 天引き率(社会保険料など)が下がる
- 病院や介護サービスを利用したときの自己負担割合が下がる
- 自治体によっては、給付金や助成制度の対象になることがある
実際、2026年度も住民税非課税世帯向けの給付金は各自治体で続いています。たとえば江戸川区は1世帯あたり3万円【要出典:江戸川区 令和8年度 非課税世帯給付金】、札幌市は非課税世帯に1人5,000円の一律給付に加えて1世帯10,000円を上乗せしています【要出典:札幌市 令和8年度 非課税世帯給付金】。
この話を聞いてから、わたしは「非課税ライン」を強く意識するようになりました。
でも、思い通りにはいかないものです
ところが、その計画は突然崩れます。コロナ禍です。平穏だった日々が一気に不安定になり、先の見えない状況のなかで、日々の精神状態を保つだけで精一杯でした。「親であるわたしが強くいなければ」と自分を奮い立たせながら、手探りで進む毎日。しばらく経ったある日、ようやく明るい兆しが見え、気持ちは前向きになれました。それからのわたしは、ひたすら働いて厚生年金を納め続ける日々です。今は基礎生活費をまかなえるところまで受給額を上げつつ、貯蓄も並行して増やそうとしています。かつて避けようとしていた「非課税ラインの外側」に、結果的に自分から進んでいるわけです。
63歳で知った、ねんきん定期便に書かれていない上乗せ分
もうひとつ、実際に受給が始まって驚いたことがあります。わたしの場合、63歳から「特別支給の老齢厚生年金」の受給が始まったのですが、その金額に企業年金の分が含まれていて、ねんきん定期便に記載されていた金額より多かったのです。日本年金機構と企業年金連合会は別の組織で、振込のタイミングも違います。日本年金機構は偶数月の15日に2か月分をまとめて振込、企業年金連合会は年2回まとめての振込です。わたしはこのことを、受給資格が発生する誕生日の1か月前に届いた通知で初めて知りました。ねんきん定期便だけを見て「これが自分の年金額のすべて」と思い込んでいると、実際の受給額や振込スケジュールとズレが生じることがある、という実例です。
そもそも年金から天引きされる3つのお金

社会保険料とか所得税とか住民税とか…名前を見ただけで頭が痛くなるんだけど、結局なにがどう違うの?
年金の手取り額を考えるときに天引きされるのは、大きく分けて3種類です。
| 天引きされるお金 | 内容 |
|---|---|
| 社会保険料 | 65〜74歳は「国民健康保険料」、75歳以上は「後期高齢者医療保険料」。年齢に関わらず65歳以上は「介護保険料」も別枠でかかります。国民健康保険と後期高齢者医療は、所得に応じてかかる「所得割」と、加入者ひとりごとにかかる「均等割」(国民健康保険はさらに世帯ごとにかかる「平等割」も)で構成されています。 |
| 所得税 | 年金収入から公的年金等控除や基礎控除、社会保険料控除を差し引いた金額に対してかかります。 |
| 住民税 | 所得割と均等割の2つで構成されます。所得税と同じく、年金収入から各種控除を差し引いた金額をもとに計算されます。 |
むずかしい言葉が並びますが、「年金の額面から、決まったルールでいくつかの金額を差し引いた残りに、税金や保険料がかかる」というイメージです。
65〜74歳と75歳以上、年金収入別の手取りシミュレーション(〇〇市・単身)
大阪府〇〇市在住、独身、年金収入以外の所得なしという条件で計算した結果が下の表です(令和8年度の保険料率・税制にもとづく試算)。
| 年金収入 | 年齢区分 | 社会保険料 | 所得税 | 住民税 | 年間手取り額 | 天引き率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 150万円 | 65〜74歳 | 約78,900円 | 0円 | 0円(非課税) | 約1,421,100円 | 約5.3% |
| 150万円 | 75歳以上 | 約69,800円 | 0円 | 0円(非課税) | 約1,430,200円 | 約4.7% |
| 200万円 | 65〜74歳 | 約222,200円 | 0円 | 約29,700円 | 約1,748,100円 | 約12.6% |
| 200万円 | 75歳以上 | 約196,400円 | 0円 | 約32,300円 | 約1,771,300円 | 約11.4% |
| 220万円 | 65〜74歳 | 約265,500円 | 0円 | 約45,400円 | 約1,889,100円 | 約14.1% |
| 220万円 | 75歳以上 | 約232,400円 | 0円 | 約48,700円 | 約1,918,900円 | 約12.8% |
共通して見えてくるのは、どの収入帯でも75歳以上の方が65〜74歳よりわずかに手取りが多いことです。理由は、75歳以上が加入する後期高齢者医療制度には、国民健康保険にある「平等割」(世帯ごとの定額負担)がないためです。介護保険料は年齢で変わらず同額なので、この差はそのまま医療保険料の仕組みの違いから来ています。
もうひとつ大事なのが、200万円から220万円への「崖」です。単身世帯の場合、総所得金額等(年金収入から公的年金等控除110万円を引いた金額)が100万円以下だと、国民健康保険・後期高齢者医療とも均等割・平等割が2割軽減されます。

つまり「所得100万円」がボーダーラインってことだよね?
年金収入200万円のケースは所得90万円でこの基準の内側
220万円のケースは所得110万円で基準の外側です。
たった20万円の年金収入の差で軽減が丸ごと外れてしまうため、天引き率が一気に上がるのです。
150万円のケースにいたっては所得40万円で「7割軽減」の対象になるため、天引き率がさらに大きく下がります。
ご自身の場合の金額を知りたいときは、まず日本年金機構の「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で年金見込み額を確認し、お住まいの市区町村の国民健康保険料試算シートや、後期高齢者医療広域連合の試算シートを使ってみてください。それだけで、大まかな天引き額のイメージがつかめます。

むずかしい数字の話が続いたから、最後にパッと確認できるチェックリストにまとめてもらえる?
年金の壁で損をしないためのチェックリスト
- ねんきん定期便だけでなく、企業年金や厚生年金基金など「別の窓口から支給される年金」がないか確認する
- 年金を増やす働き方を選ぶ前に、実際の手取り額(社会保険料・税金の天引き後)をシミュレーションしてみる
- お住まいの自治体の住民税非課税基準額を確認する(単身か扶養家族ありかで基準が変わります)
- 国民健康保険・後期高齢者医療の軽減基準(7割・5割・2割)を、自分の総所得金額等と照らし合わせる
- 介護保険料は年金収入とは別に、市区町村ごとの所得段階表で確認する
- 特別支給の老齢厚生年金の受給がある方は企業年金の有無と支給額・支給時期を早めに確認しておく
- 自治体の給付金・軽減制度は申請しないと使えないものが多いため、広報やケアマネージャーなど専門職からの情報を逃さない
まとめ
年金額を増やすことは、老後の安心につながる大事な選択です。ただ、今回の試算からわかるのは、額面が増えるほど手取りも同じペースで増えるわけではない、ということです。とくに軽減基準のすぐ外側に出てしまうと、天引き率がまとまって上がることがあります。わたし自身、非課税ラインを目指していたのに結果的にそこから離れることになりましたが、だからこそ「額面ではなく手取りで考える」ことの大切さを実感しています。ご自身の年金見込み額がわかったら、ぜひお住まいの自治体の資料や試算ツールで、ご自身のケースに近い数字を確認してみてください。

なるほど、大事なのは「額面」じゃなくて「手取り」で考えることなんだね!
各数値は令和8年度の〇〇市・大阪府の公表資料をもとに算出した概算です。住民税均等割の内訳、〇〇市の生活保護基準級地区分、後期高齢者医療の軽減率の細かい適用条件、介護保険料の所得段階判定の指標定義については、最新の自治体窓口での確認をおすすめします。
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