杖・歩行器・車椅子でも自立できる暮らしの整え方
防災の話というと「避難所への避難」が中心になりがちです。でも、考えてみてください。杖や歩行器、車椅子になった時、エレベーターが止まった建物の階段を降りて、危険な道を避難所まで歩けるでしょうか。
私は歩けないと思っています。だから私の防災は、「避難できない日」を前提にした在宅避難の備えです。今日は、私が実際に進めている備えをすべて書きます。
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ただし「在宅避難ありき」ではありません ― 停電×真夏は命の危険
最初に、一番大事なことを。停電と真夏、この条件がそろったら、誰かに助けを求めてでも避難することをお勧めします。エアコンのない真夏の室内は、命に関わるからです。
実は買ったばかりのエアコンが真夏に基盤不良で動かなくなりました。最新機種にもかかわらず、当初は「修理まで10日ほど」と言われましたが、部品が5日半で届き、そのまま修理してもらえました。それでも5日半、夜は眠れず、昼間は近くの図書館で涼む日々で、本当に疲れ果てました。この時の顛末はこちらの記事に詳しく書いています。
災害でなくても、真夏に冷房を失うとこれほど消耗します。在宅避難は「家で安全に過ごせること」が大前提。それが崩れる時は、迷わず助けを求めて移動する。この線引きを、まず自分の中に持っておきたいのです。
わが家の「在宅避難力」を確認する
在宅避難ができるかどうかは、住まいそのものの安全性で決まります。私の場合はこうでした。
・大都市圏のUR、1981年以降の新耐震基準を満たす鉄筋コンクリート造で頑丈な建物
・行政のハザードマップでは、地震・水害・台風いずれも比較的安心とされる地域
・住まいは中間階(浸水の心配が少なく、屋上や上層階ほど揺れも増幅しにくい)
ただし新耐震基準を満たしていても、経年劣化や施工状況によっては損傷が出ることもあります。実際、今回の熊本地震でも専門家が「耐震性能が劣る建物は倒壊するほどの揺れだった」と指摘しており、裏を返せば新しければ絶対安全というわけではありません。「新耐震だから安心」と過信せず、自治体の耐震診断や点検もあわせて確認しておきたいところです。
さらに最近、掃き出し窓に飛散防止・UVカットのフィルム(メーカー記載の耐久10年)を業者に施工してもらいました。地震や台風でガラスが割れて飛び散ると、室内が危険地帯になり、素足では歩けなくなります。窓の対策は、在宅避難の土台です。
ご自身の住まいの確認は、お住まいの自治体のハザードマップから。終のすみか探しの記事にも書きましたが、私は住まい選びの段階から建物の構造と立地を条件にしていました。
最大の壁はエレベーターの停止
今はまだ健康のために階段を使うこともあります。それでも、重いものを運ぶ時は疲れるので使いません。地震でエレベーターが止まれば階段を使うしかありませんが、杖や歩行器、車椅子になったら、それはもう無理です。避難所までの道中も危険だらけ。
そしてエレベーターは、大きな地震の後、点検が済むまで復旧に時間がかかります。だから私は、「階段を使わずに家の中で生き延びられる量」を備えることにしました。
水と食料は2週間分、できれば3週間分
エレベーターの復旧までの日数を考えると、水と食料は2週間分。3週間分あればさらに安心です。国や自治体が目安として示す「3日分」「1週間分」は、避難や支援を前提にした量。階段を降りられない在宅避難では、それでは足りません。
実際、2026年の熊本地震では、発災から2週間後の8月10日時点でも断水の復旧率は全体で68.5%、特に被害の大きかった地域では7.8%にとどまっていました。3週間分を目安にしつつ、地域によってはそれ以上の備えも視野に入れておきたいところです。
置き場所は、狭い1DKでも分散させています。
・水 … ベッド側の押入れと、玄関収納に分けて保管(一カ所が取り出せなくなっても大丈夫なように)
・食料 … 台所のシンク下にローリングストック
ローリングストックとは、レトルトや缶詰など普段食べるものを少し多めに買い置きし、食べたら買い足す方法です。賞味期限切れの心配がなく、非常食を別に管理する手間もいりません。ひとり暮らしにはこの方法が一番続くと思います。
停電した時、食べる順番も決めています。まず冷蔵庫の中身から食べ始め、冷凍庫は絶対に開けません。開けなければ冷凍庫が保冷庫の役目をしてくれて、庫内の温度がゆっくり上がる分、ちょうど食べ頃まで自然に解凍されていきます。冷蔵庫のものを食べ終えたら、次は冷凍庫の中身。そして最後に、備蓄食品に手をつける。この順番を守るだけで、ひとり暮らしでも真夏の停電による食料の心配がかなり減ると感じています。
情報と灯り ― スマホ・ラジオ・コードレスライト
災害時の命綱はスマートフォン。だからモバイルバッテリーは必須です。
あわせて私が備えているのが災害用の多目的小型ラジオ。懐中電灯・SOSライト・サイレン付きで、手回しとソーラーで充電でき、スマホの充電もできます。停電が長引いてモバイルバッテリーが尽きても、電源を自給できる安心感があります。
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照明は、家電の記事でも書いたコードレスライトを日頃から使うことがそのまま備えになっています。ベッド横、ドレッサー、ダイニング。毎日使っていれば電池切れにも自然と気づけます。
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トイレと薬 ― 忘れると一番困るもの
断水すると、水や食料より先に困るのがトイレです。わが家は非常用トイレ50回分を2つ、計約100回分をトイレ内に保管しています。1日5回とすれば約20日分。
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水・食料の2〜3週間分と、ちょうど釣り合う量です。使う場所に置いておけば、いざという時に探さずにすみます。
ここでひとつ、大切な注意を。被災生活では「トイレに行きたくないから」と水分や食事を控えてしまう方が多いのですが、これが脱水や膀胱炎、エコノミークラス症候群(血栓)につながり、過去の災害で繰り返し健康被害が起きています。トイレは我慢しない前提で、食料と同じ日数分を備える。だからこその20日分です。
それと同じくらい大切なのが常備薬。持病のある方は、薬が切れることが災害そのものより命取りになりかねません。お薬手帳(またはスマホでの記録)と数日分の予備を、すぐ持ち出せる場所に。
在宅避難の落とし穴 ― 支援の情報は「避難所」に集まる
ここは書き加えておきたい大事な点です。在宅避難を選んでも、支援物資や給水、復旧の情報は避難所に集まります。家にいると、その情報が届かないことがあるのです。
だから在宅避難でも、動けるうちは避難所に顔を出して「この部屋で在宅避難しています」と伝えておく。それが物資や安否確認につながります。
また多くの自治体には、ひとりで避難が難しい方を地域で支える避難行動要支援者名簿などの制度があります。今の私はまだ対象ではありませんが、体の状態が変わったら登録する。こういう制度の存在を元気なうちに知っておくことも、備えのひとつだと思います。
なお、自治体が公開しているような非常持ち出し袋の詳細リストには、今回はあえて触れていません。今回は「動かずに生き延びる備え」に絞ったからです。
これから揃えたいもの
備えは一度に完璧を目指さず、少しずつ。私がこれから購入したいのは、この3つです。
・災害時の靴 … ガラスや瓦礫の上でも歩ける踏み抜き防止タイプ。ベッドの近くに置きたい
・階段も上がれるキャリー … エレベーター停止時、水や物資を上の階へ運ぶため
・家電が使えるソーラー蓄電池(ポータブル電源) … 停電時に冷蔵庫や扇風機を動かせれば、在宅避難の質が大きく変わります
まとめ ― 「避難できない日」は、いつか来る日
今は歩けます。階段も使えます。でも、杖・歩行器・車椅子の日はいつか来るかもしれない。その日の自分が災害にあっても大丈夫なように、動ける今、備えておく。
水と食料は2週間分。トイレは100回分。灯りと電源は日常使いの中に。そして、停電×真夏の時だけは迷わず助けを求める。
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在宅避難の備えは、転倒予防の家具配置と同じで、特別なことではなく「暮らしの中に組み込むこと」なのだと思っています。

